「名人戦」七番勝負は、去年、最年少で「名人」のタイトルを獲得した藤井八冠がここまで3連勝していて、初めての防衛まであと1勝としています。
第4局は大分県別府市で行われ、2日目の19日は、先手の豊島九段が18日の対局終了時に次の1手を書いた「封じ手」を立会人が開封して、対局が再開しました。
将棋 名人戦第4局 藤井八冠敗れる 豊島九段「名人」復帰に望み
将棋の八大タイトルで最も歴史のある「名人戦」の第4局が大分県別府市で行われ、挑戦者の豊島将之九段(34)が藤井聡太八冠(21)に勝ってこのシリーズ初めて白星を挙げ、「名人」復帰に向けて望みをつなぎました。
対局は、大駒の飛車や角の交換から互いに攻め合う展開が続きましたが、終盤、豊島九段が豊富な持ち駒を駆使して徐々に攻勢に転じます。
藤井八冠も必死に防戦しますが、午後8時49分、藤井八冠が95手までで投了。
この結果、豊島九段がこのシリーズ初めての白星を挙げ「名人」復帰に向けて望みをつなぎました。
藤井八冠はことしすでに「王将」と「棋王」のタイトルを防衛していますが、初めてとなる「名人」のタイトル防衛は次の対局以降に持ち越しとなりました。
次の第5局は今月26日と27日、北海道紋別市で行われます。
豊島将之九段「次につながったのでよかった」
このシリーズで初めての白星を挙げた豊島将之九段は「内容は精査してみないと分からないが次につながったのでよかった。すぐ次の対局があるので、コンディションを整えて自分なりに精一杯やりたい」と話していました。
一方、敗れた藤井聡太八冠は「陣形に傷が多くて、受けに回っても受けきれない気がしたので、攻めに行ったが、無理な攻めだろうなとも思っていた。気持ちを切り替えてがんばりたい」と話していました。
「勝負めし」選ばれたお店は
将棋のタイトル戦で、勝敗の行方とともにファンが注目するのが、棋士たちが対局中に食べる食事やおやつ、いわゆる「勝負めし」です。
今回の名人戦でも別府市の飲食店から公募でメニューが選ばれ、棋士に食事を提供した店には、早速ファンが訪れていました。
19日の昼食で
▽藤井聡太八冠は別府のソウルフードとも呼ばれる「別府冷麺」を
▽挑戦者の豊島将之九段は、別府湾でとれたハモやブランド地鶏など、地元の食材を卵でとじたどんぶりを
それぞれ注文しました。
このうち、藤井八冠が注文した「別府冷麺」は、そば粉が練り込まれた麺や牛肉を使用したチャーシュー、それにキャベツを使用したキムチがのせられているのが特徴です。冷麺を提供した別府市の飲食店では、大盤解説会の会場で藤井八冠の注文したメニューを知ったファンが、同じ食事を楽しもうと次々に訪れていました。
東京から訪れた女性は「藤井さんが冷麺を注文したと聞いて、急いで店に来ました。名人と同じものを食べられるのが、いちばんうれしいです」と話していました。
冷麺を提供した「六盛」の関屋太介代表は「電話で注文を受けたときは正直びっくりしました。別府冷麺は盛岡冷麺に比べると知名度が低いので、今回の名人戦を機会に有名になってくれたらうれしいです」と話していました。
温泉につかって「大盤解説会」楽しむ
今回、名人戦の舞台となった大分県別府市は全国有数の温泉地として知られています。その温泉につかりながら名人戦の「大盤解説会」の映像を視聴するイベントが市内の温泉で開かれました。
今回の名人戦では、別府市内の2か所で「大盤解説会」が行われました。
このうち別府市公会堂で行われた解説会の中継映像が、共同温泉の「九日天温泉」で流されました。温泉の浴場にはテレビモニターが設置され、訪れた将棋ファンが湯煙が立ちこめるなか、湯船につかって解説の模様を食い入るように見ていました。
県内在住の30代の男性は「温泉に入りながら大好きな将棋の解説が聞けるなんて最高です。いい思い出になりました。藤井さんに頑張ってほしいです」と話していました。
県内の70代の男性は「50年以上将棋が好きですが、温泉に入りながら将棋の中継をみるのは初めてで驚いています。藤井さんは孫みたいな存在だと勝手に思っているので、応援しています」と話していました。
会場周辺には多くの将棋ファン
大分県では11年ぶりの将棋のタイトル戦となった今回の名人戦。会場となった大分県別府市には、県外から多くの将棋ファンが訪れました。
JR別府駅前に設置されている「別府観光の父」、油屋熊八の銅像は、今回の名人戦にあわせて将棋の駒を手に持つなどの名人戦仕様のコスプレをしています。駅を訪れた将棋ファンがコスプレした銅像を写真に収めていました。
また、対局の会場となっている旅館の周辺では、交通規制がしかれていましたが、会場入りする藤井聡太八冠や挑戦者の豊島将之九段の姿を一目見ようと多くの人が集まっていました。
愛媛県から訪れた女性2人は「ほんの少し藤井さんが見えました。来てよかったです。どちらにも頑張ってもらいたいです」と話していました。
千葉県から訪れた女性は「藤井さんの活躍を見て自分も将棋を習い始めました。名人を防衛する瞬間を見届けようと思ってはるばる別府まで来たのでぜひ藤井さんに勝ってほしいです」と話していました。